“動物性脂肪とコレステロールの摂取を減らして植物油を増やすと、血清コレステロール値が下がって動脈硬化が予防できる”、というコレステロール仮説は、過去半世紀の間、臨床栄養の分野で広く受け入れられてきた。ところがここにはいくつかの落とし穴があり、完全に崩落してしまった。
一方、“血清コレステロール値が高いと動脈硬化性疾患が増えるので、コレステロール値を低く保つのが良い”、というのは医学の常識であった。しかしこの常識も崩れてしまった。大部分の人(40〜50歳以上の一般集団)にとっては、高コレステロール値は心疾患の原因とはなっていなかった。そればかりではなく、コレステロール値の高い群のほうが癌死亡率も総死亡率も低かった。
動脈硬化性疾患のほか増えつつある多くの癌、アレルギー・炎症性疾患、神経症(行動異常)などにいたるまで、コレステロールではなく油脂(あぶら)の選び方が重要な因子となっており、健康寿命を延ばす上で非常に重要でなのである。
本講演では、新しいコレステロール医療の方向性をテーマに、私たちが健康を維持するための情報を提供していただいた。 |